
『端から端まで駆け回りたくなる日当たりの良い庭園にも似て』
楽曲のバラエティが豊かなので、これだけの懐の広さに対応するには、聴き手にも自由な気持ちが要求される。
つまり、ギャング・ラップやダンス・サウンドのように、イメージや態度を最初から決めて聴くには向いていない、ということ。簡単ではないのだ。
どの曲も、平和を祈念しつつ、のどかな光景を描きながらも、理想を追いかけており、わざわざオリジナルのジャケットに歌詞を記載してくれているのだから、なるべくそれも読みたいところ。
たとえば(3)、「カリフォルニアに上京して、パフォーマーとしてキャリアを積もうとしたけど、あ〜あ、結局ソウルを失って、感覚も鈍ったのさ」といったセリフには深い感情がこもっている。
「オレには、このスモール・タウンが向いているんだ」と歌いはするが、スピーチの作る音は、むしろ宇宙感覚に満ちている。
アルバムを通して、決して閉じこもらずに、むしろ、思う存分広がりを見せるのが魅力である。
ビートの利いた曲が多いので田舎臭さは緩和され、キーボードの放つエレクトロ・フレーヴァーも隠し味として強い効果がある。
デラ・ソウルを髣髴とさせるようなオールド・スクール色の強い曲も楽しいし(13、21)、チョロチョロと水の流れる音に小鳥のさえずりだけを添えた「一杯の水」というスキット(7)も心なごむ。こういうサービス精神のあるスキットなら、いくらでも歓迎だ。
ただ、日本盤解説にあるように、スピーチ自身維持するのに苦労したという統一感には、やや欠けるかもしれない。散漫で、ついていけないという人も中にはいるだろう。それでも、スピーチの作品群の中では、かなり「上位入賞」の出来だ。